こんにちは。手島順也です。
ドローンを飛ばす不動産屋、として福岡県香春町で不動産業を営んでいます。本業のかたわら、空撮、イベント企画、町から委託を受け「移住コーディネーター」として移住や空き家活用に取り組んでいます。
こんなテンプレの自己紹介ですが、まさに今回の記事はこの「ドローンを飛ばす不動産屋」としての経験が活かせる内容になるかと思っています。
先日こんなツィートをしました。
ここで出ている「ドローンを活用した空き家を見つける方法」をテーマにメリット、疑問点、そして地方でこの方法が使えるのか?について書きます。
・ドローン活用の可能性
・空き家調査の手法確立
・香春町空き家バンクについて
などを念頭にまとめます。

赤外線ドローンを使った空き家調査の実証実験が行われました
「ドローンにより撮影した熱赤外画像と可視光画像を用いた空き家分布推定手法の検討」というなんともわかりづらいタイトルの調査報告を見つけました。概要は以下の通り。
ドローンと熱赤外カメラを組み合わせた機器を開発し,同機器を用いて空き家の現地調査を迅速に実施する手法を検討し
-中略-
ドローンに搭載した熱赤外カメラと可視光カメラを用いて,対象となる建物の熱と光の分布を撮影することで,建物単位で居住者の生活に由来する熱と光の発生を把握し,空き家か否かの判定を行う
「ドローンにより撮影した熱赤外画像と可視光画像を用いた空き家分布推定手法の検討」より
空き家調査は個別目視が一番確実度が高いですが、その分時間や人件費がかかります。最終的には個別目視ですが、その事前段階としてドローンの空撮で広範囲を撮影し、それに赤外線画像を組み合わせることで空き家の可能性をあげる方法になります。
報告書に簡潔にまとまっていますのでぜひリンク先の文章をご確認ください。
空き家調査のスピードアップが図れる

この手法が確立されると各自治体での空き家データベース化が安価で作れることになり、それが整備されることで対策が立てれるようになります。戦略を立てる際には現状分析のためのデータが必要で行政などの大きな組織になるとそのデータをもとに比較、手法を検討します。データがなければ何も始まらないのです。
では次にこちらの「ドローンにより撮影した熱赤外画像と可視光画像を用いた空き家分布推定手法」の流れを簡潔に説明します。
大まかに言うと①昼間の撮影→②夜間の撮影(赤外線カメラ)→③画像の見比べとなります。
空き家判定までの流れ①昼間の撮影
まずは昼間の撮影です。
対象となるエリアをドローンで写真撮影します。こちらは通常のカメラですね。ドローンのメリットは上空から俯瞰して撮影できることなので、1枚の写真の中に数十軒の住宅外観が撮影できます。目で見て判断がつくようなわかりやすい空き家はこの写真で判断できそうですね。
例えば、崩壊しそうな家、ツタがはっている家、草ぼうぼうの家、空き家の看板、雨戸が閉められている、などです。空き家の看板がない限りは、確実に空き家と断言できないですが、ある程度の絞り込みはできます。

空き家判定までの流れ②夜間の撮影(赤外線カメラ)
次に赤外線カメラを使った撮影です。
夜間に同じ場所から飛ばして赤外線カメラで撮影します。報告書によると冬季の夜間に飛ばしたということで、冬季であれば気温が低いので室内の熱反応が出やすいこと、夜間に行なったのは仕事から帰宅している可能性が高いからだと思われます。
外観でわかりやすい空き家の他にも手入れされた一見空き家っぽくない住宅もあります。定期的に手入れされているので、普通に暮らしていそうな家です。こちらの判断はかなり難しくこの赤外線で熱反応を見ることで人が入ってないので空き家の可能性があるな、と判断することができます。
空き家判定までの流れ③画像の見比べ

上記の2枚の写真を見比べ空き家の可能性がある物件を選定するようです。例えばこのエリアには総物件数で100軒、空き家可能性大30軒(空撮+赤外線画像)、空き家可能性小20軒(空撮)などという報告ができるかもしれません。
空き家問題解決の起爆剤になるかも
この方法論で言えば、飛ばす場所の調査や手順が終わっている前提であればかなりのスピードで市や町の全体空き家総数の一次データが手に入ります。これはかなり画期的なことで、個別目視とドローン撮影での費用や日数を比較すれば雲泥の差が出るでしょう。
もちろん、ドローン撮影の方が圧倒的に日数が少なく、値段も安くなります。
ドローンを飛ばす不動産屋から見た疑問点

とはいえ、この報告書を読んでそんなにうまくいくかな?と思ったのも事実です。個別目視で空き家を見てきた経験と赤外線ドローンを操縦している経験からの疑問なので、あながち的外れではないかなと。
疑問点①空き家の判断できるのか?
報告書の写真にもある通り、空撮でエリアをななめの角度から撮影します。そうやって撮影すると遠近法で手前の家は大きく、奥の家は小さくなります。当たり前ですね。その小さくなった住宅が空き家なのか?という判断はかなり難しいのではないかと思います。
「もっと近くの写真で見たい!」となりそう。

疑問点②撮影範囲を定められるのか?
①ともかぶりますが、今度は撮る側で撮影範囲をどこまでにするかはかなり難しい問題だと思います。密集住宅地などわかりやすい場合はマニュアルも作れそうですが、特殊地形の場合はどこまで撮るか?、住宅地が少ない場所は撮影する意味があるのか?実際現地に行ってみないとわからない部分も多そうで計画段階にも悩みそうですし、実際に撮影する際にも想定外のことが起こりそうです。
そういう意味では、密集住宅地のような限定的な使い方になるかもですね。
疑問点③飛ばす場所
赤外線カメラは夜間に飛ばす必要性があります。ドローンパイロットが一番恐れているのは墜落などの事故です。機体が目視できないと障害物などに気づかず事故になる可能性が出てきます。
夜間飛行による音の配慮や飛行可能区域の制限など日中に比べて考えることも増えます。
基本的には好き好んで飛ばしたい状況ではありません。
撮影スポットの選定、プライバシーの配慮、許可権者への確認など不特定多数の対象物を撮る時には考えることが多くなりがちです。
この報告書から見える疑問点
などなど、実際にやっているからこそその手法に期待もしますし、疑問点も出てきます。
報告書に「なお本稿では紙面の都合上,分析手法や分析結果の詳細は割愛した。本研究の詳細は秋山ほか(2019)を参照されたい」とあるように、私の疑問点はこの報告書を読んでのみ解釈ですので実際にはそのあたりはもう解決済みなのかもしれません。
また、私のいるフィールドが地方なので調査の前提条件の違いなども考慮する必要があります。
とはいえ香春町でやってみる
とは言え、とは言えですよ。こうなったらやってみるしかないでしょう。このまま終われば疑問という名でぼかしたクレーマーにしかならないわけで、空き家調査の経験、ドローンパイロット、赤外線カメラのドローン所有の3つが揃っている私がやらないといけないでしょう、と勝手に心に誓った次第であります。
実際上記の属性があるにも関わらず、赤外線ドローンは建物点検で使えそうだな〜くらいしか思いつかなかったわけですから。

地方版の実証実験にもなる
地方版の実証実験データにもなりますし、これは使えないという判断になるかもしれない、もしくはもっといい方法が見つかるかもしれません。想定しえる注意点を書き出して早速やってみます。
注意点①夜間飛行
事故が一番怖いので某私有地で撮影します。基本的には上昇と写真撮影のみを行い、動画撮影はやらない方向です。
注意点②プライバシーの配慮
撮影してから考えますが、空撮画像、赤外線画像は公開しないほうがいいかと思っています。プライバシーの配慮です。
注意点③赤外線カメラの力
冬季の夜間に室内の熱反応を撮影できるのか!?Mavic 2 Enterprise Dualの力の見せ所ですね。時間、角度、距離などいくつかの要因の最適地を探してみます。
まとめ
今回は、「赤外線ドローンを使って空き家を見つける方法【メリットや疑問点】」を紹介しました。次回は実際に使ってみた記事が書けるかと思います。
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